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ぜにがたへいじとりものひかえ

銭形平次捕物控

野村 胡堂

124 唖娘

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 12,006 字 · 25 页

青空文庫

咄嗟の間、ガラッ八はそうでも言う外はありません。

「近頃は新しいお弟子を皆んなお断りしておりますよ」

「そう言わずに頼むぜ。尺八を稽古しなきゃ、男が立たねエことがあるんだ。師匠に取次いでくれ」

「でも」

老女は頑なに首を振りました。

「不意に来たからって怪しい人間じゃねエ。神田の八五郎という者だ。束脩はいくらだえ。――樽代とか何とかあるなら、そう言ってくれ。憚りながら――」

ガラッ八は懐へ手を入れて財布の中の銭を読みました。「憚りながら金に糸目は付けねエ――」とやるところでしたが、財布の中に残っているのは、四文銭がたった六枚。これじゃろくな蕎麦も喰えません。

「おい、お六。折角そうおっしゃるなら、お通し申すんだよ」

奥から錆のある男の声が掛りました。

ようやく通されてみると、中の調度の思いのほか立派なのにガラッ八は胆を潰しました。家も外は思いきり荒れておりますが、中は畳建具は言うに及ばず、床も天井も張り直して、眼の覚めるような清々しさ。

「尺八が執心なそうで、及ばずながら御相談相手になりましょう。――前々からだいぶおやりでしょうな」

主人は三十二三、大町人の若隠居が、遊芸に打込んで、贅沢三昧の日を送っているといった様子です。