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ながさきのかね

長崎の鐘

永井 隆

「長崎の鐘」日比谷出版、1949(昭和24)年1月30日

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 65,109 字 · 131 页

青空文庫

われわれは衛生隊であり、その活躍はこれからだ。断然踏みとどまらねばならぬ。敵はさらに引き続きこの爆弾を落とすであろう。そうして一週間以内に上陸戦闘を展開するであろう。浮き足だったらおしまいだ。混乱に陥ったら何もできなくなってしまう。まず隊の集結、編成、衛生材料の確保、食糧の調達、野営の準備、それができてから上下左右の連絡、野戦病院の位置選定だ。いずれここは艦砲射撃の弾巣になるだろう。患者を大急ぎで近郊の谷間へ集めねばならぬ。

どの窓を見ても炎の林だ。周囲はすっかり大火になってしまった。この建物の一角にも火は燃え移ったらしく、ぱちぱち音がし始めた。器械をしらべていた仲間が次々に帰ってきた。

「もう滅茶苦茶です」「管球類は全部破損」「電纜は断線、変圧器は通路を塞がれて引き出せません」「標本は吹き飛んで手がつけられません」報告はすべて惨また酷。

みんなが私の口を開くのを待って、じっと私をみつめている。他の科の先生や看護婦や生徒が、血まみれになって二人三人手をつなぎながら、ものもいわずにそばを走り去る。ごうと火炎の鳴るのが聞こえ、窓から火の粉が吹きこんでくる。