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ながさきのかね
長崎の鐘
永井 隆
「長崎の鐘」日比谷出版、1949(昭和24)年1月30日
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 65,109 字 · 131 页
敵機が頭上に来るとそれをおもむろに取りだし、首をぐるぐる回しながら、敵機の行動を報告するのが、この男の趣味である。
「級長、どうなるんやろ、戦争は」大阪がしつこく繰り返した。
「戦争をどうするか――だ」藤本が押さえつけるようにいった。「戦争によって僕たちの運命が決められるんじゃない。僕たちによって戦争の運命が決められるんだ。僕たち相戦う若い者、アメリカの学生と日本の学生との力比べによって、勝利がどちらへ転ぶかが、決まるんだ」
「でもなあ、あんまりやないか、近ごろのざまは。物量の差がひどすぎるさかい、僕らのちっぽけな努力なんざあ、屁にもならん」
「そりゃそうかもしれんたい。しかしだ。とにかく今この下の町へ爆弾が落ちたら、理屈も議論もなか。すぐ飛びだしていって、血止めをせにゃならん。僕は最後まで僕の本分を尽くすばい」藤本が決然といい放った。大阪は納得しなかった。そこへ大きな角材をかついで副級長がやって来た。副級長は小倉中学出身で黙々と仕事をする男、今も監視壕の補強工事のため独りで汗を流しているのだった。
「敵がほんまにここへ上陸して来よったら、どないするん、おい、副級長」