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ざっとう

雑沓

宮本 百合子

「中央公論」1937(昭和12)年1月号

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 24,832 字 · 50 页

青空文庫

「どっからどこまで調和してるなんて、そんなことないさ。だって……」

言葉をかえて、順二郎は続けた。

「そんなこと云や寮だって同じじゃない? やっぱり人間がいるんだもん――僕、場所より自分の気持が主だと思う」

「じゃあね、順ちゃん、こういうことはどう? 順ちゃんは東京高等へ入ったお祝に、あんな温室をこしらえて貰ったわね。そういうことはどう考えてる? そういう扱い、そういう扱いをされている自分、それをどう考えている?」

順二郎は灯の下で首をねじって、凝っと自分に注がれている姉の眼を見まもった。やや暫くして、低い沈痛なところのある声で、

「そんなに悪いことだろうか」

とききかえした。宏子は、愛情と歯がゆさとが交り合って、苦しく自分の胸の中に沸るのを感じた。

「悪いって――善悪という言葉のまんま悪いって云えるかどうかしらないけど、とにかく、そういうことは、この社会では千に一にもない特別なことだけは確かだ。そういう特別な温室、生活の温室の中に順ちゃんがいることも確かだ。あの温室を建てた金で月四五十円稼ぐ人間が、女房、子供をくわして、ざっと一年半暮せるよ」

なお、姉の顔から視線をはなさず、順二郎は、