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あめあがる

雨あがる

山本 周五郎

「サンデー毎日涼風特別号」毎日新聞社、1951(昭和26)年7月1日

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 21,794 字 · 43 页

青空文庫

四

――ああいけない。

伊兵衛は吃驚した。そして、それが一人の若者を五人がとり巻いているのだとわかると、われ知らず釣り道具を投げだし、松林の中からそっちへ駆けだしていった。

「おやめなさい、やめて下さい」

彼はそう叫びながら手を振った。

四

こぬか雨のなかで、かれらはみな血相を変え、凄いほど昂奮し、殆んど逆上していた。

「どうかやめて下さい、待って下さい」

伊兵衛は側へ駆け寄って、両方を手で押えるような恰好をして云った。

「怪我をしたら危ないですから、そんな物を振りまわすなんて、けんのんなことはやめて下さい、どうかみなさん」

「さがれ下郎、やかましい」とり巻いているほうの一人が喚いた、「よけいなさし出口をするとおのれから先に斬ってしまうぞ」

「それはそうでしょうけれども、とにかく」

「まだ云うか、この下郎め」

「まあ危ない、そんな乱暴な、あっ」

逆上している一人が(脅かしだろうけれど)刀を振上げて向って来た。伊兵衛はどう躱したものか、相手の利き腕を掴み、かれらのまん中へ割って入りながら、「お願いします、わけは知りませんがやめて下さい、つまらないですから、どうか」

利き腕を掴まれた侍はじたばたするが、どうしても伊兵衛の手かられることができない。