轻松读懂日语经典作品
ja-reading.com
轻松读懂日语,轻松阅读日语。在线阅读日语经典作品。支持在阅读过程中显示假名、查询生词、翻译句子。
あめあがる
雨あがる
山本 周五郎
「サンデー毎日涼風特別号」毎日新聞社、1951(昭和26)年7月1日
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 21,794 字 · 43 页
彼は胸がどきどきし、いよいよ時節が来たかと思って、夢のような幸福な気分に満たされた。そのとき妻に起こされた。
「お客さまでございます」
三度めくらいに彼は眼をさました。そしてやっぱり夢だったかと、少なからずがっかりしたが、客は藩中の侍だと聞いて、こんどははっきりと眼がさめた。
「侍ですって、それは、いやすぐ出ます、ちょっと顔だけ洗って」
伊兵衛は裏へとびだしていった。
客はあの草原へ馬を乗りつけた一人で、「御老職であるぞ」と号令をかけた男だった。年は三十四五、名は牛尾大六というそうで、この安宿には閉口したらしく、土間に立ったまま用件を述べた。要約すると、今朝の礼に一盞献じたいし、また話したいこともあるから、青山主膳宅までぜひ来て貰いたい、というのであった。伊兵衛はわくわくした。
――正夢かもしれない。
前兆ということも軽蔑はできない。よければ同道する、駕籠が待たしてあるからというので、待って貰って支度をした。
「どういう御用でございますか、どこでお知合いになった方ですか」
おたよは心配そうに訊いた。彼は失望させたくなかったので、詳しいことは帰って話すと云い、古くはあるが紋付の衣服に袴をつけて、久方ぶりに大小を差して、同宿者たちの訝しさと羨ましげな眼に送られながら、牛尾大六と共に出ていった。