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ゆきのとう

雪の塔

海若 藍平

「九州日報」1923(大正12)年2月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 5,032 字 · 10 页

青空文庫

玉雄は学校に行く途中、こんな塔が立っているのを一度も見た事がありませんでした。夢ではないかと眼をこすって見ましたが、矢張り本当に雪の中に立っているようです。玉雄は急に照子の肩をゆすって、

「照ちゃん、御覧よ。ホラあんな高い塔が……あれ、窓から美しい光がさして……さあ早く行きましょうよ、あそこまで」

けれども可哀そうに照子はもう死んだように横になって、只ぼんやり玉雄の顔を見ているばかりでした。

玉雄は一生懸命で照子を抱え起して、やっと背中に背負い上げて、膝まで来る雪の中を一足一足塔の方へ近寄りましたが、すぐ近くに見える塔がなかなか遠くて、いくら歩いても近寄られません。そのうちに玉雄は力が尽きて、

「助けて下さい」

と一声高く叫ぶと、そのまま照子と一所に雪の中に打ち倒れて了いました。

その声が聞こえたのかどうだかはわかりませんが、玉雄がたおれると間もなく、向うの白い高い塔の一番下の処の入り口が開いて、そこから大勢の人が出て来ました。見ると、それはどれもこれも身体に薄い白い着物たった一枚着た若いお姫様のような人ばかりで、素足で雪の中を舞い踊りながら吹きまわる嵐につれて歌をうたっています。