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ゆき

雪

楠田 匡介

「探偵新聞」1948(昭和23)年5月5日号、5月15日号、5月25日号、6月5日号、6月15日号

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 24,792 字 · 50 页

青空文庫

急報に接して二日路の本庁から久保田検事の一行が、犬橇を飛ばして到着した。そして一時捜査本部は新しい捜査に色めき立ったが、然し依然として何んの得る所もなかった。只隣家の広瀬医師から一つの証言があった。

それは、兇行のあった夜、広瀬氏が二時一寸前、急病患者で暗い廊下を診察室の方へ歩いて行くと、窓硝子越しに、ほんのり隣家の灯が見えていた。

「おや、今頃まで?」と一寸好奇心でカーテンをあげて見ると、書庫にまだカンカンと、灯がともっていた。

(ほう老人、やっているわい。だが、此の寒夜に……)と、その時は別に、不思議にも思わなかったが、診察室の鞄を取って引返して来ると、今度はその灯がスーと、何かに吸われる様に、薄らいでやがてふっと消えて終った。

時間の正確な点も、玄関の柱時計が二時を打ち昔なら丑満頃ってんですね、と云った、迎いの男の言葉に、丑満つ頃なんて、やに時代がかった事をいうじゃないか。出るかね、と広瀬氏が男の前に手を垂して見せて、冗談口をきき合ったので、よく記憶しているというのであった。

その後、当の広瀬医師と、製紙工場の附属病院長の若尾氏の解剖で、死亡の時間も午前二時頃と推定された。