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ゆき

雪

楠田 匡介

「探偵新聞」1948(昭和23)年5月5日号、5月15日号、5月25日号、6月5日号、6月15日号

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 24,792 字 · 50 页

青空文庫

細工してあればある程きっと、どこかに破綻があるものですよ。“ながし”や変人の兇行でない限りはね」と久保田検事は口でそんな強がりをいったものの、やはり身動きも出来ない、厚いコオリの壁の中に、閉じ込められた思いだった。

「未亡人を呼んでもらいましょうか」

田名網警部は古市署長に頼んだ。

もう五十をいくつも越した――年よりもひどくふけて見える小柄な未亡人の常は、おどおどした態度で人々の前に立った。

「一、二お聞きしたく存じましてね」

一通りのくやみをのべた後、警部はこう常にいった。「この間、お客さん達はご主人がお呼びした人ばかりだったでしょうね」

「ええ、そうでございます。……伊東さんはコオリのため船がまだ三四日出ませんのでそんな時は時々来て泊るのですが、今度も一昨日から私の所に泊っていました。そこに丁度高沢寺さんが見えられたものですから、今度の船で東京へ帰られる五十嵐さんの送別会を兼ねまして、何んですか、そんな事を皆さんがいい出して、一同でお食事を頂いたのでございますが……」

「山村さんは、始終おいでになります?」

「ええ、檀那寺でございます。先代様とは碁や書籍の事でよく口争いをしましたり、仲直りをしたり、長い事でございました。