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ゆき

雪

楠田 匡介

「探偵新聞」1948(昭和23)年5月5日号、5月15日号、5月25日号、6月5日号、6月15日号

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 24,792 字 · 50 页

青空文庫

「ランプの消えたのは、二時でしたが、然しそれは、何も早川の生きていた証明には、ならないのです。私はあの灯の消えたのと、早川の死は、別々に考えるべきだと思ったのです」

「だって君、じゃランプは誰が消した! 犯人が、あの灯を消したのだよ。いや犯人でなくとも、その時誰かが、被害者以外に、あの部屋にいた」

「所が、ランプを消した者は、いなかったのです」

「え! 何ですって? 消した者がいない!」

と検事は、思わず叫んだが、すぐ「莫迦な」とつぶやいた。

「では、どうして?」と今度は署長が質問した。

「独りで、消えたんですよ」

その唐突さに人々はぼう然として、警部を見守った。

「風が消したか? “隙間風、人を殺す”って北露西亜の諺があるからね」

久保田検事が皮肉って、顔をゆがめた。

「あれは、すうと、誰かの手で一度心を降ろしておいて、ふっと消したのでしたよ」と医師も口を添えた。

「ええそうでしたね……私もそう思っていました。そしてその事にのみ囚われて、失敗していました。あの犯罪の構図を組立てようと、かかったのですが、あの灯のためにどうしても大きなそごが出来てしようがないのです。