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しんさいにっし
震災日誌
喜田 貞吉
「社会史研究 第一〇巻第三号」1923(大正12)年11月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 19,617 字 · 40 页
階上で同君と雑談に耽っていると、突然あの急激な地震に襲われたのだ。ここでちょっと断っておくが、同君のお宅は最近自分の監督のもとに新築したもので、この工事については自分はかねて東京の地震の多いのに顧慮し、職人らに笑われながらも柱間にうるさいほど筋交を入れさせたり、基礎工事に鉄筋を入れさせたりしたものであった。したがって倒壊するようなことなどは万々ないと信じている。しばらくM君と顔を見合わしていたが、揺れ方があまりに烈しく、なかなか止みそうにもない。屋根瓦が崩れ落ちる音、窓硝子の壊れ落ちる音が一時に四方に起る。たよりない自信はたちまち裏切られ、恐怖心に促されて前通りの工事中の電車道へ飛び出した。隣家の誰れ彼れ、皆一様に飛び出している。が、家族は一人も出ていない。道路から少し奥まった住宅の方を望むと、煙が濛々と高く立ち昇っている。さては火事かと突嗟のさいに思ってみたが、そう早く火のまわるはずがない。ともかく変事があったに相違ない、家族の安否いかんと、まだ揺り返しに踏む足もフラフラしながら屋内に飛び込んでみると、妻と次男以下の三子とは、書庫にしている石蔵の隅に、小さくなって固まっている。