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あおふくのおとこ

青服の男

甲賀 三郎

「現代」1939(昭和14)年1月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 14,026 字 · 29 页

青空文庫

だが、お徳さん、洋服が違ってやしないか。どうだね、僕の洋服に覚えがないかね」

お徳はじっと信造の洋服を見つめていたが、

「そうだ、思い出したゞよ。確かに旦那さまに違えねえだ。昨日の昼ござらしたのはお前さまだよ。確かに今着てござらっしゃる鳶色の洋服だよ。そういえば、そこに死んでござらっしゃる人の洋服は青いだゝ。俺ハア、あんで洋服にさ気イつかなかったべい」

「そりゃ、君誰だって、こんな所に人の死んでるのを見たら、そこまでは気がつかんさ。無理もないよ」

「全く俺ア、小浜の旦那がオッ死んでるだと思ったゞよ」

「いや、どうも」警部は軽く頭を下げて、「もう警察の問題ではありません。ではどうぞ。後片づけをお願いいたします」

やがて警察の一行は引上げて行った。

二人の足取

警察署へ帰ると、榎戸警部は一行のうちに交っていた望月刑事を呼んだ。

「今日の事件は大体に於て怪しむべき点はないようだ。あの小浜信造という青年の説明した所によると、死んでいた北田卓一という青年は突飛な性格の持主らしく、夜中に友達の家に押しかけて、戸締りを破って這入るなどという事を平気でやる男らしい。