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ふうりゅうばけものやしき
風流化物屋敷
山本 周五郎
「講談雑誌」博文館、1947(昭和22)年10月号
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 20,228 字 · 40 页
……さて五五の突歩を取るかどうか、考えているうちに夕飯が届いた。詰り早くも日が昏れるわけである、権八はそわそわしながら膳部を運んで来たが、また酒が付いているのではと迷った、終るのを待っていれば旦那は食事が長いから日が昏れてしまうだろう、といってそこへ置いたばかりで、酒はとも訊けない、だいぶ迷っていたが喉の鳴るのには敵わない、えいと覚悟をきめてお伺いをたてたら、旦那はやっぱり嗜なみやあしゃらねえと仰しゃる、「ではこれから親の看病にやって頂きますでしょうが、へえこれは持っていって病人に頂かせますでしょうがな」むやみに仮名ちがいの言葉がぬたくってうまく頂戴した。午飯の時のと合せて五合、こいつを抱えて後は野となれ、権八はいっさんに柘榴屋敷をとびだしたが、それから半刻もすると天満川の河岸っぷちにあるいかがわしい家のひと間で、おでこで赭っ毛の肥った女を相手に、「なにしろおめえ場所が柘榴屋敷だ、そこへもってきて江戸にいる人間が旦那の向うに坐って将棋を指そうってんだから肝っ玉を潰さあ」などと看病に熱をあげていた……こちらはその柘榴であるが、旦那の平之助はまだ将棋盤に向って考えこんでいた。