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ふうりゅうばけものやしき
風流化物屋敷
山本 周五郎
「講談雑誌」博文館、1947(昭和22)年10月号
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 20,228 字 · 40 页
「ああそうそう折角だから頂きましょう、お手数だがここへ下さい」「……あがるんですか」「貰いますよ」「……困っちゃったなあ」化物はこう呟いてもじもじし始めた、「そのう実は、実はないんですよ、これは空っぽなんで」「……というと、それはどういうことなんです」「全然お茶なんか入っちゃあいないんですよ、すっからかんなんで」「へえ、――で、それをわざわざ持って来たんですね」「ええ、つまり、持って来たんです」「するとなんですね、初めから騙す積りで来たというわけですね」旦那はむっとしたようである、化物は慌てて手を振った、「決してそんな騙すなんて、そんな失礼なことは考えちゃあいませんよ、だってこんな筈じゃあなかったんで、あれしたもんなんですから」「じゃあどんな筈であれしたんです」「どんな筈って、――どうも困っちゃったなこれは、済みません、ちょっと待って下さい」とうとうやりきれなくなって、化物はこそこそ立っていった。どこへなにをしにいったのか、ひとつ後から跟いていってみましょう読者諸君、足音をさせないようにこっちへこう来て下さい。……廊下を二た曲りして端下の更に向う、権八のなんに使うかわからないと云った部屋の一つに、十人ばかりの人間が車座になっている、行灯には蔽いが掛けてあるので光は暗いが、人間であることは間違いがない、しかも