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ふうりゅうばけものやしき
風流化物屋敷
山本 周五郎
「講談雑誌」博文館、1947(昭和22)年10月号
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 20,228 字 · 40 页
「まあ、ずいぶんずうずうしい」「そんなことはありません、みんな気の好い化物ですよ、商売の丁半だってずっと離れた部屋でやるし、絶対に静かで音も声も立てやしない、私はぐっすり眠れるし、彼等も一つ目や幽霊なんかやらずに済むから安楽だと云ってます、おまけに席料とか云いましたっけ、私は見やしませんが、毎晩なにか銭のような物を包んで置いてゆきますよ」「まあ、――」とみ嬢の手は久し振りで活溌に生垣を毟りだした。しかし彼女の思考力は既に空想の美から現実の美へと移っている。即ち観察者の立場から世話人の席へ引越していたので、その「まあ」は危険予知の信号ともいうべきものであった、「ずいぶんおかしな話のように思いますけれどいったいその丁半という商売はどんなものなんですの」「私はよく知りませんがねえ、時どきがらがらッぽんなどという音がして、丁目だ半目だなんていう声が聞えますよ」「まあ、――まあ、――」とみ嬢は激しく喘いで身震いをし、今や両手はめざましい勢いで生垣を毟りだした。それから更にまあと喘ぎ、「いけません、いけません」と叫んだ、「それで、貴方はその人たちから銭を受取っていらっしゃったんですね」