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ふうぼう
風貌
小山 清
――太宰治のこと
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 15,448 字 · 32 页
」と云った。私が「わかっていますよ。わかっていますよ。」と云ったら、「これから、田中と信じあって行け。」と云った。田中君はああいう豪傑だから忘れてしまったかも知れない。太宰さんは私にこんなことを云ったことがある。「『教育勅語』に友達の間柄のことを、どう云ってあると思う? 朋友相信じなんだ。」「惜別」を書かれていた頃のことである。そしてこのことは「惜別」に書いてある。「惜別」のある箇所にはまた、人の顔色ばかり窺っている、奴隷の表情をした魯迅のことが書いてある。田中君のある作品に私のことを「むかし藤村の書生をしていたとかいう、小川君という老文学書生が」というふうに書いてある。私はむかし島崎先生に大変お世話になったことがあるが、書生をしていたというわけではない。私はあれを読んで、田中君も、もう少し書きようがありそうなものだという気がした。田中君が逝くなられてから、亀井さんの追悼の文章のなかに、「太宰の最大の愛弟子が後を追った」というように云ってあった。おそらく田中君にとって、最上の手向けの言葉であろう。田中君が第三者の口から一番云ってもらいたかった言葉である。