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めしまつま
飯待つ間
正岡 子規
正岡子規『飯待つ間』。同一底本的分册已合并为一书。收入:飯待つ間、犬、画、句合の月、九月十四日の朝、くだもの、ランプの影、熊手と提灯、徒歩旅行を読む、病牀苦語、車上の春光、煩悶、初夢、夢、病、墓、酒、権助の恋、恋。
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 59,525 字 · 126 页
こういう際には電報をやるだけでもいくらかの心やりになるものだ。この夜また検疫官が来て、下痢症のものは悉く上陸させるというので同行者中にも一人上った者があった。自分も上陸したくてたまらんので同行の人が周旋してくれたが検疫官はどうしても許さぬ。自分の病気の軽くない事は認めて居るが下痢症でない者を上陸させろという命令がないから仕方がないという事であった。如何にも不親切な、臨機の処置を知らぬ検疫官だと思うて少しは恨んで見た。しかし今は平和の時でないのだから余り卑怯な事はいうまい位の覚悟は初めからして居る。そう思うて自分はあきらめた。けれどもつくづくと考えて見るとまた思い乱れてくる。平生の志の百分の一も仕遂げる事が出来ずに空しく壇の浦のほとりに水葬せられて平家蟹の餌食となるのだと思うと如何にも残念でたまらぬ。この夜から咯血の度は一層烈くなった。固より船中の事で血を吐き出す器もないから出るだけの血は尽く呑み込んでしまわねばならぬ。これもいやな思いの一つであった。夜が明けても船の中は甚だ静かで人の気は一般に沈んで居る。時々アーアーという歎声を漏らす人もある。一週間の碇泊とは随分長い感じがする。