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めしまつま
飯待つ間
正岡 子規
正岡子規『飯待つ間』。同一底本的分册已合并为一书。收入:飯待つ間、犬、画、句合の月、九月十四日の朝、くだもの、ランプの影、熊手と提灯、徒歩旅行を読む、病牀苦語、車上の春光、煩悶、初夢、夢、病、墓、酒、権助の恋、恋。
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 59,525 字 · 126 页
菅笠や草鞋を買うて用意を整えて上野の汽車に乗り込んだ。軽井沢に一泊して善光寺に参詣してそれから伏見山まで来て一泊した。これは松本街道なのである。翌日猿が馬場という峠にかかって来ると、何にしろ呼吸病にかかっている余には苦しい事いうまでもない。少しずつ登ってようよう半腹に来たと思う時分に、路の傍に木いちごの一面に熟しているのを見つけた。これは意外な事で嬉しさもまた格外であったが、少し不思議に思うたのは、何となく其処が人が作った畑のように見えた事である。やや躊躇していたが、このあたりには人家も畑も何もない事であるからわざわざかような不便な処へ覆盆子を植えるわけもないという事に決定して終に思う存分食うた。喉は乾いて居るし、息は苦しいし、この際の旨さは口にいう事も出来ぬ。
明治廿六年の夏から秋へかけて奥羽行脚を試みた時に、酒田から北に向って海岸を一直線に八郎湖まで来た。それから引きかえして、秋田から横手へと志した。その途中で大曲で一泊して六郷を通り過ぎた時に、道の左傍に平和街道へ出る近道が出来たという事が棒杭に書てあった。近道が出来たのならば横手へ廻る必要もないから、この近道を行って見ようと思うて、左へ這入て行ったところが、昔からの街道でないのだから昼飯を食う処もないのには閉口した。