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めしまつま

飯待つ間

正岡 子規

正岡子規『飯待つ間』。同一底本的分册已合并为一书。收入:飯待つ間、犬、画、句合の月、九月十四日の朝、くだもの、ランプの影、熊手と提灯、徒歩旅行を読む、病牀苦語、車上の春光、煩悶、初夢、夢、病、墓、酒、権助の恋、恋。

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 59,525 字 · 126 页

青空文庫

しかし今日になっては死を嫌うがために煩悶することは極めて少ないので、むしろ苦痛の甚しいために早く死ねばよいと思う方が多くなって来た。これは経験のない人に話したところがわからん事であるからいうにも及ばぬが、しかし時々この誤解をしられるために甚だ肝癪に障ることがある。宗教家らしい人は自分のために心配してくれていろいろの方法を教えてくれる人があるが、いずれも精神安慰法ともいうべきもので、一口にいえば死を恐れしめない方法である。その好意は謝するに余りあるけれども、見当が違った注意であるから何にもならぬ。今日の我輩は死を恐れて煩悶して居るのでない。それよりも自分に注意を与えるその宗教家などの様子を見ると、かえって何だか不安心なような顔付が見えて居て、あべこべに此方から安心立命の法を教えてでもやりたいと思うのがある。これらは皆死を恐れて居るのである。しかしかくいえばとて自分は全く死を恐れなくなったというわけではない。少し苦痛があるとどうか早く死にたいと思うけれど、その苦痛が少し減じると最早死にたくも何にもない。大概覚悟はして居るけれど、それでも平和な時間が少し余計つづいた時に、ふと死ということを思い出すと、常人と同じように厭な心持になる。