轻松读懂日语经典作品
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かみのけ
髪の毛
佐々木 邦
「面白倶楽部」大日本雄辯會講談社、1926(大正15)年9月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 6,242 字 · 13 页
「そんなことがあるものか」
「あなたは初めの三月は些っとも嘘を仰有らなかったわ。けれども四月目からチョク/\私をお瞞しになりましたよ。お友達の家へ寄ったと仰有る時、蟇口や紙入を検めて見ますと、屹度五六円から十円ぐらい耗っていますわ。お附き合いでお酒を飲みにいらっしゃるなら仕方ありませんが、嘘を仰有らなくても宜いでしょう? 私、あなたからそんなに匿し立てをされますと、何ともいえない悲しい心持になりますよ」
と細君も最早いつまでも黙っていない時期に達していたのである。
「しかし昨夜は真実だったろう?」
「えゝ。蟇口の方は一円二十銭耗っていましたが、紙入の方はこの二三日手つかずですわね?」
「随分精確に調べているんだね? 恐れ入ったよ」
「ホヽヽ。これが一番正確なメートルでございますって」
「誰がそんなことを言うんだい?」
「中川さんの奥さんよ」
「ふうむ。それじゃ仕方がない」
と井口君は苦情も言えなかった。中川というのはこの夫婦の間に媒妁の労を執った同僚である。井口君は尻尾を巻いて出勤した。
中川君の細君は井口君の細君の姉さんとは女学校で同級だったから極く親しい。仲人もその関係から殆んど自分一人でやって退けたのだが、単にそれ丈けで満足するような女性でない。