轻松读懂日语经典作品
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かみのけ
髪の毛
佐々木 邦
「面白倶楽部」大日本雄辯會講談社、1926(大正15)年9月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 6,242 字 · 13 页
近所に住んでいるのを幸い、時々御無沙汰伺いに出頭して、種々と善意の入れ智恵をする。合せものゝ離れものと信じているような通り一片の月下氷人でない。
「文子さん、具合の悪いところがあったら、いつでも仰有って頂戴よ。御一報次第上りますわ。オホヽヽヽ」
と仰有る。文子さんはついこの間シンガーミシンを一台月賦で買い込んだ。中川夫人はその折立ち合ったので、勧誘員の口調を思い出したのである。後々まで責任を持つ。ミシンと良人を同一視している証拠には、
「何うせ一生使うものですから、どっしりした方が好くてよ。後から取り換えるったって億劫ですし、その上割増を取られますわ。少しは見場が悪くても、丈夫一式の狂わないものに限ります」
とあって、洋服屋の使う奴に定めてくれた。中川君が正にその通りである。どっしりしていて鷹揚だ。見場は好くないけれど、丈夫一式に出来上っている。会社の方を能く勤めるのは無論の話、細君が随分手ひどく当っても晏如として狂わない。
井口君と文子さんの間にポケットの問答のあった日も、中川夫人は、
「奥さん、御無沙汰致しました」
と言って、昼から姿を現した。閑で困っているから、思い立てば直ぐに駈けつける。