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かみのけ
髪の毛
佐々木 邦
「面白倶楽部」大日本雄辯會講談社、1926(大正15)年9月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 6,242 字 · 13 页
何うだね?」
「皮肉なことばかり言う男だなあ」
「中川君、何うだね?」
「一々僕を引き合いに出すね。僕ばかり世帯持ちじゃあるまいし」
と中川君はその都度迷惑する。
秋月君は尚お何処の細君が虎で何処のが猫か悉皆研究している。
「君、米沢君は喉仏が段々凸出して来るだろう? あれは始終胸倉を取られる影響だよ。小突かれる度に当るから、自然に軟骨が発達する」
とか、
「君、君、今日は井口君が悄げている。彼処も最早ソロ/\小競合の始まる時分だ。何しろ中川夫人が軍師についているからね」
とかと日常観察に怠りない。或晩宴会の席上で、
「米沢君の手の甲を猫に引っ掻かせて見せようか?」
と発起したことがある。
「それは面白い。しかし何うするんだい?」
と相棒の沖君が興味を持った。
「細工は流々だから、先ず盛り潰してくれ給え」
「盛り潰さなくても最早グデン/\だよ」
「未だいけない。一寝入りさせなければ駄目だ」
「然うか」
といたずらものは寄って群って米沢君に飲ませた。
その翌日は日曜だったが、月曜日に米沢君の手を見ると、果して甲に掻き疵が二条ついていた。
「米沢君、その手は何うしたんだい?」