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ぜにがたへいじとりものひかえ
鬼の面 ――銭形平次傑作選3
野村 胡堂
野村胡堂『鬼の面 ――銭形平次傑作選3』。同一底本的分册已合并为一书。收入:銭形平次捕物控、銭形平次捕物控。
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 28,312 字 · 57 页
「あれは何んだ」
「お隣の家ですよ」
「此方を覗いているのは?」
「御主人の丹波屋浅吉さんで、――花見船に誘っても、ツムジを曲げて来ませんでした」
小僧は何心なく説明するのです。これも佐渡屋平左衛門の恐れていた一人と、八五郎から聴いているので、平次は変な心持になります。
「鉄砲で撃ったとすると、隣のあの窓からちょうど狙い頃ですね」
八五郎はもうきめてかかります。
「川の中からだって撃てるよ。尤も船から撃てば、煙硝の煙は川へ散って、家の中までは大して匂わないだろうが」
「おいおい伊佐松どん」
「へエへエ」
平次に呼ばれて、小僧はキョトンとしました。名ある御用聞にどん扱いにされて、少し面喰らった様子です。
「その鉄砲の音の聴える前か後に、誰も家の中へ入った者も、家から出た者もなかったのか」
「そんなものはありません。旦那は用心ぶかいから、表も裏も念入りに閉めて、家中皆んな留守のことにし、窓だけ開けておきました」
「家の外から廻って窓へ潜り込む工夫はないか」
「この辺は家と家との間は狭いし、木戸は念入りに閉めてあるし、そんな訳には行きませんよ」
「すると、やっぱり」
平次は考え込みました。