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ぜにがたへいじとりものひかえ
鬼の面 ――銭形平次傑作選3
野村 胡堂
野村胡堂『鬼の面 ――銭形平次傑作選3』。同一底本的分册已合并为一书。收入:銭形平次捕物控、銭形平次捕物控。
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 28,312 字 · 57 页
四
裏口を開けてくれたのは姉さんで、井戸端へ行って冷たい水で身体を拭いて、そのまま入って寝みましたが、その時はもう子刻(十二時)過ぎだったと思います」
「その時お勝手には?」
「誰も居りませんでした、晩の仕度は要らないからと申したので、姉も下女のお角も引込んで寝んだようでした」
「それから」
「朝まで一と寝入りで、お角の騒ぎ出した声に驚いて飛起きるとあの始末で――私の部屋は店二階で、滅多な物音は聴えません」
主人の弟の金之助はこう言うのです。
四
長崎屋の凶悪な事件は、内儀のお町の殺戮が最初で、際限もなく発展して行きました。
それから二日、三日無事な日が過ぎたのもほんの暫らく、内儀のお町が殺された後、五日目の朝でした。
「親分、とうとう、大変なことになってしまいましたぜ」
ガラッ八の八五郎が、薫風に懐ろを朶ませながら、糸目の切れた奴凧のように飛込んで来たのです。
「どうした八、何が大変なんだ」
「神楽坂の長崎屋七郎兵衛がやられたんですよ」
「何? こんどは主人が?」
「だから直ぐ行って見て下さい、こんな事と知ったら、下っ引きを五六人狩り集めて、神楽坂中を見張って置くのでした」