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はとつかい

鳩つかひ

大倉 燁子

「富士 九巻八号」1936(昭和11)年7月号

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 14,680 字 · 30 页

青空文庫

それで鳩を放す日は僕に定めさせてくれませんか。当日数名の刑事と共にそこへ先廻りしてはり込んでいようと思うんです」

「どうして鳩舎のある場所が分ったんだ?」

「まだはっきりとは分っていないんだが、松本農学博士に調べて頂いた結果、大凡の見当はつきました。あの三つの鳥籠は鳩が来た時にはきれいだが、一日、二日と経つと不思議なことに隅の方に真黒い灰のような煤のような軽いものが溜って籠の中は段々薄黒くなる。その黒いごみを掻き集めておき、それから鳩の脚だの指の間だのにこびり付いていた土を落し、一緒に博士の処へ持って行って調べてもらいました。ところがそれは灰でも煤でもなく土だった、黒土、――土地の者はボカ土と云っているが、東京附近のある処一帯はこのボカ土なんだ。風の吹く日はそれが空中に舞い上って、四辺は真暗くなる事さえある。鳩の翼の間にもぐり込んでいたものが自然に落ちたり、羽ばたきする度に落ちたりして、それが籠の中に溜るんだね。それから最初に来た鳩の胃袋から出た軍配虫、それ等から想像して見当がついたが、どこに鳩舎があるかという事はこれから探さなければならないんだ。確定した時杉山氏に鳩を放して頂きましょう」