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さぎむすめ
鷺娘
大倉 燁子
「宝石 一巻四号」1946(昭和21)年7月号
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 10,370 字 · 21 页
百合子はもうこれ以上ずけずけ云われるのは辛かったので、
「わかりましたわ。私、一生懸命にやります。きっと、うまく踊りますから堪忍して下さい」
「名取りにならなけりゃよかったなんて大きな口をきいたんだからね、うまく出来なかったら札を返してもらいますよ」
「はい」
「まゆみちゃんところへ行って、よく教わって来るといいよ」
「はい」
「あの人の鷺娘、実によかったからねえ」
「はい」百合子は膝の上に涙を落した。
「名披露に肝心のあんたが一番拙かったなんて云われちゃ耻っ掻きだからね」
「はい」と震える指先で眼頭を押えた、涙はその指を伝わって流れた。
百合子の胸の中は口惜しさで一杯だった。家元の一言一句はさながら毒汁でも注射したように骨身に通った。朋輩の前でこれほどまでに侮辱しなくても、と、家元の心が恨めしかった。この屈辱をそそぐためには、どんなに苦しくっても努力して立派に踊りぬいて見せる事だ、それより他に道がない。
家へ帰ると早速猛練習を始めた。一夜まんじりともしないで踊りつづけ暁方近くには疲れきって舞台に俯伏したまま前後不覚に寝入ってしまった。
「百合ちゃん、風をひくよ。今日は大事な舞台稽古だというのに――」