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マージャンさつじんじけん
麻雀殺人事件
海野 十三
「新青年」博文館、1931(昭和6)年5月号
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 16,337 字 · 33 页
(よく睡っている……)
帆村は、そっと障子をしめて踵を二三歩、階段の方へ引返した。が、なにを考えたものか突然彼は、ふたたびとってかえすと、障子をガラリと開け、靴のままヅカヅカと、松山の寝床に近づいたが、ポケットから点火器をとりだして、カチッと火をつけると、左手で静かに枕元の方へさしだし、一方の右手を伸ばして夜具の襟をグッと掴むと、ソッと持ちあげてみた。
「呀ッ――」
点火器の淡黄色い光に照し出された一つの顔は、たしかに松山虎夫の顔であるには相違なかったけれど、そこには最早あの活々とした朗かなスポーツ・マン松山の顔はなかった。顔面はドス黒く紫色に腫れあがり、両眼は険しくクワッと見開いて見え能わざる距離を見つめていた。喘ぎ終った位置に明け拡げられた大きな口腔のうちには、弾力を喪った舌がダラリと伸びていた。真白な美しい歯並には、ネバネバした褐色の液体が半ば乾いたように附着していた。
「すっかり事切れている――どうやら中毒死のようだ。自殺か、他殺か。……」
流石に彼は狼狽もみせず、大きい声も立てず、だが眉宇の間に深い溝をうかべて、なにごとか、五分間ほど、考えを纏めているらしい様子だった。