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おうごんをあびるおんな

黄金を浴びる女

野村 胡堂

「オール読物」1933(昭和8)年4月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 11,350 字 · 22 页

青空文庫

「…………」

「俺は吹屋町の屋敷に住込んで半年になるが、銀座の小南と違って、金座の後藤は躾が宜いから、年に四両の給料の外には小判の面も見せたことがねえのだよ、――嘘か本当か知らないが、あの三戸前の奥蔵へ入りゃア、其場を去らず手討だという話だ、手討にされたら化けて帰って、駿河守様へ申上げる積りで、半年越し折を狙ったがいけねえ」

「…………」

「三戸前の蔵の鍵は、三右衛門が自分で持って居て、誰にも開けさせねえことにしてあるんだ」

「…………」

権次の話が次第に核心に触れて行くのを、お駒は耳を塞ぎ度いような心持で聴いて居るのでした。

勘定奉行の下役――お駒と内証で夫婦約束までした相沢宗三郎と切れて、此間から熱くなって通う、後藤三右衛門の倅三之丞の許へ行けと言うのは、その吹屋町の後藤の私宅にある、三つの奥蔵の中を探れと言う頼みでしょう。

大概の事なら、真っ向から断って退けるお駒ですが、相手は矢部駿河守ではそうもなりません。何んと言う因果な通り合せか、駿河守がまだ一千五百石の小祿を食んで、火附盗賊改役をして居る頃、親の仁兵衛はフトした罪を犯して、危うく遠島にもなるところを、駿河守の寛大な処置で助けて貰った大恩があったのです。