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こくしかんさつじんじけん

黒死館殺人事件

小栗 虫太郎

「新青年」博文館、1934(昭和9)年4月号~12月号

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 296,741 字 · 584 页

青空文庫

また、秘露トルクシロの遺跡にも、トロヤ第一層都市遺跡(紀元前一五〇〇年時代すなわち落城当時)の中にも、同様の記録が残されている……」と該博な引証を挙げた後に、法水はこれら古史文の科学的解釈を、一々殺人事件の現実的な視覚に符合させようと試みた。

「とにかく、魔法博士デイの隠顕扉があるほどだからね。この館にそれ以上、技巧呪術の習作が残されていないとは云えまい。きっと、最初の英人建築技師ディグスビイの設計を改修した所に、算哲のウイチグス呪法精神が罩もっているに違いないのだ。つまり、一本の柱、貫木にもだよ。それから蛇腹、また廊下の壁面を貫いている素焼の朱線にも、注意を払っていいと思う」

「すると、君は、この館の設計図が必要なのかね」と熊城が呆れ返って叫ぶと、

「ウン、全館のを要求する。そうすればたぶん、犯人の飛躍的な不在証明を打破出来やしないかと思うよ」と法水は押し返すように云ったが、続いて二つの軌道を明示した。「とにかく涯しない旅のようだけども、風精を捜す道はこの二つ以外にはない。つまり、結果において、ゲルベルト風の共鳴弾奏術が再現されるとなれば、無論問題なしに、伸子が自企的な失神を計ったと云って差支えあるまい。