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こくしかんさつじんじけん
黒死館殺人事件
小栗 虫太郎
「新青年」博文館、1934(昭和9)年4月号~12月号
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 296,741 字 · 584 页
「クロード・ディグスビイ」……割られたが、しかし、あのウェールズ猶太のものとは異なっていた。次に、降矢木算哲……熊城の持った木槌が軽く打ち下されて、胴体にジグザグの罅が入った。そうして、それが二つに開かれた次の瞬間、三人は全く悪夢のようなものを掴まされてしまった。ちょうど縁から幾分下方に当る所に、疑うべくもない拇指痕が、レヴェズの咽喉に印されたのと同一の形で現われた。さすがに検事も熊城も、この衝撃には言葉を発する気力さえ失せてしまったらしい。そうしているうちに、熊城は眠りから醒めたような形で、慌てて莨の灰を落したが、
「法水君、問題は、これで綺麗さっぱり割り切れてしまったのだ。もう猶予するところはない。算哲の墓※を発掘するんだ」
「いや、僕はあくまで正統性を護ろう」と法水は異様な情熱を罩めて叫んだ。「あの疑心暗鬼に惑わされて、算哲の生存を信ずると云うのなら、君は勝手に降霊会でも開き給え。僕は紋章のない石――を見つけて、人間様の殺人鬼と闘うんだ」
それから壁炉の積石に刻まれている紋章の一つ一つを辿ってゆくと、はたして右側の積石の中に、それらしいものを発見した。