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こくしかんさつじんじけん
黒死館殺人事件
小栗 虫太郎
「新青年」博文館、1934(昭和9)年4月号~12月号
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 296,741 字 · 584 页
「それでは、私に聯想語をお求めになりますの。黄から紅に――そうすると、それが黄橙色になるではございませんか。黄橙色――ああ、あのブラッド洋橙のことを仰言るのでしょう。それで、きっと貴方は、私が嚥んだ檸檬水の麦藁から、石鹸玉が飛び出したとでも……。いいえ私は、麦藁を束にして吸うのが習慣なのでございますわ。でもそうなったら、その束が一度に弦へは、番らないではございませんか」と伸子の皮肉が、猛烈な勢いで倍加されていった。「それから、あのダン――丁抹国旗が悲しい半旗となったということが、あのダンネベルグが私に何の関係がございますの。そして、青酸加里がいったいどんな……」
「いや、けっしてそんな……。むしろその事は、僕が津多子夫人に対して云うべきでしょう」と法水は微かに紅を泛べたが、静かに云った。
「実は、その黄から紅に――と云うのが、アレキサンドライトと紅玉との関係なんですよ。ねえ伸子さん、たしかあの時貴女は、拒絶の表象――紅玉をつけたのではありませんか」
「いいえ、けっして……」と伸子は法水を凝っと見詰め、声に力を罩めた。「その証拠には、演奏が始まる直前でしたけども、旗太郎様が私の髪飾りを御覧になって、いったいレヴェズ様のアレキサンドライトをどうして――とお訊ねになったのを憶えておりますわ」