轻读日语

轻松读懂日语经典作品

ja-reading.com

轻松读懂日语,轻松阅读日语。在线阅读日语经典作品。支持在阅读过程中显示假名、查询生词、翻译句子。

こくてん

黒点

豊島 与志雄

――或る青年の「回想記」の一節――

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 30,665 字 · 62 页

青空文庫

が生憎その時男は古い外套のポケットに両手をつっ込んで、両肩をねじり加減に前方へつき出していた。その恰好は如何にも見すぼらしい職工風だった。然し、妙に鋭い眼付と耳の前の黒子とが何だか変だった。職工にだって耳に黒子のある者はいくらもある筈だが、その男の黒子はどうも職工らしい感じではなかった。

「じゃあほんとに知らないんですか。」

男は私の眼をじっと見つめてきた。

「本当に知らないよ。」

「そいつあ、弱ったなあー。」

男は何と思ったか、五十銭銀貨を一つ取出して、強いて私に握らした。

「わたしが寺田さんを探し廻ってることは、誰にも……家の人にも、内証にしといて下さいよ。警察にでも知れると一寸厄介ですから。……では、坊ちゃんは本当に知らないんですね。」

「ああ知らないよ。」

「弱ったな。」

男はなお暫くもじもじしていたが、溜息をつきながら立去っていった。

私は家に飛んで帰った。

暫く考えた上で、私は父に尋ねてみた。

「お父ちゃんは、寺田さんがどこへ行ったか、本当に知らないのかい。」

「知らねえよ。何だい。」

で私は、途中で逢った男のことを話した。

父はひどく淋しそうな顔付をして、考えこんでしまった。