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つづみくらべ

鼓くらべ

山本 周五郎

「少女の友」1941(昭和16)年1月号

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 8,577 字 · 18 页

青空文庫

そのあとで民間から鼓の上手を集め、御前でくらべ打ちを催して、ぬきんでた者には賞が与えられる、……今年もまたそれが間近に迫っているので、賞を得ようとする人々は懸命に技を磨いていた。

お留伊は幼い頃からすぐれた腕を持っていたので、教えに通って来る師匠の観世仁右衛門は、これまでに幾度もお城へ上ることを勧めていた。けれど勝気なお留伊は、御前へ出て失敗したときのことを考え、もう少しもう少しと延ばして来たのである。……能登屋のお宇多という娘は十六歳で、もう二度もお城へ上っているが、まだ賞を与えられたことはいちどもなかった。そのうえこんどはいよいよお留伊が上るというので、それとなく人を寄越してはこちらの様子を探るのであった。

「そうでございますか」

老人は納得がいったようにうなずいた。「……それでわたくしを、能登屋から探りに来た者と思し召したのでございますな」

「でも同じようなことが何度もあったのだもの」

「わたくしはすっかり忘れて居りました」老人は遠くを見るようにして云った。

「……鼓くらべはもうお取止めになったかと思っていたのです」

「どうしてそう思ったの」

老人は答えなかった。