轻松读懂日语经典作品
ja-reading.com
轻松读懂日语,轻松阅读日语。在线阅读日语经典作品。支持在阅读过程中显示假名、查询生词、翻译句子。
ケーからキューまで
KからQまで
寺田 寅彦
「文芸評論」1933(昭和8)年10月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 3,869 字 · 8 页
これが物理的物質的の世界である。Aから出発してBへ行ってから廻れ右をして帰って来ると、もうAは消えてなくなってCになっている。廻れ左をして帰るとそれがDになっている。これが心の世界である。
七
ファシストはアルプスを愛し、リベラリストはラインやエルベの川の景色を、マルキシストはツンドラや砂漠の景色を好むかもしれない。松やもっこくやの庭木を愛するのがファシストならば、蔦や藤やまた朝貌、烏瓜のような蔓草を愛するのがリベラリストかもしれない。しかし草木を愛する限りの人でマルキシストになれる人があろうとは想われない。
八
防空演習の夜にとうとうおしまいまで燈火を消さなかったのが近所の風呂屋である。何度となく警告しに来た青年団員がおしまいに少し腹を立てたらその時だけ消した。しかし青年団員が一町も行過ぎるとまた点燈した。尤も電燈を消さなかったのは風呂屋の主人であるが、それを消させなかったのは浴客である。サイレンが鳴り、花火が上がり、半鐘が鳴っている最中に踵を接して暖簾を潜って這入って行く浴客の数は一人や二人ではなかったのである。