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ジ アフェア オブ トゥー ウォッチイズ
The Affair of Two Watches
谷崎 潤一郎
「新思潮」1910(明治43)年10月号
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 13,107 字 · 27 页
「君、明日家から貰って来られんかな。」
原田も杉も下宿住いで、家から通って居るのは私だけだから、こう云う災難には時々遇うものとしなければならぬ。
「一寸困るな。此の頃は僕も大分費ってるから。」
「いや、いゝ。僕が此の時計を売る。」
杉がニッケルの時計を出した。
「売るのはつまらんよ。僕の知ってる質屋へ持って行こう。もう一つ時計があると五圓になるが、生憎持って居らん。」
と、又原田がジロ/\私の帯の間を睨めつける。
「時計なら、僕も出そう。金が入ったら出して呉れ給え。」
とう/\私も時計を出して了った。
妙な事には此れで話が全然きまって了って、ジッと待ってさえ居れば、百圓が遠くの方から我々目がけてトットと駈けて来る筈なのだが、時計を出してから杉と私は少し不安になり出した。原田ばかりは嫌に脂下ってスパ/\やって居る。
「けれども未だ明日は飲めないんだな。どうしても百圓入る迄には二三日かゝるだろう。」
何だか待ち遠でならないので私はこう云った。
「チョッと待ち遠だね。けれどナニ我慢するサ。原田、明日五圓拵えるはいゝが、費って了っちゃいかんぜ。」
「馬鹿を云うない。大丈夫だよう。