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ジ アフェア オブ トゥー ウォッチイズ

The Affair of Two Watches

谷崎 潤一郎

「新思潮」1910(明治43)年10月号

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 13,107 字 · 27 页

青空文庫

何となくアヤフヤにも思われたが、一と通り理窟らしいので私もつい釣り込まれ、原田の下宿開明館の二階へ上り込んだ時分には、三人とも全然其の腹になり切って居た。

原田に客膳を奢らせて晩飯を食いながら、えらい鼻息で話し始めた。原田は百圓手に入ったら三人で吉原へ行こうと云う。私はそれより柳橋へでも繰り込んで、粋に遊ぼうと主張する。杉は躍気になって、

「つまらんさ! そんな事をしたって! 其れよりは多勢引っ張って行ってウント牛肉でも食わして紙幣ビラを切って見せるんだ。驚くだろうなア皆が。」

何しろ大枚百圓と云う金の柱を中央に、三人が三方からと見こう見して、さすって見たり、撫でゝ見たり、其の周囲をグル/\廻って居るような話なのだ。

「おい、所で五圓はどうして拵える。」

己は冷静だろう、と云わんばかりに杉が切り出した。多分原田も私も疾うから其れに気が付いて居たのだろうが、百圓があまり眼前にチラ/\するので、不愉快な金策の相談なんかは後廻しにして、一と先ずホクホク嬉しがって置きたかったものと見える。

「そりゃア君、二三日の中に百圓入るのだもの、出来ない奴があるもんか。」と云いながら原田はジロ/\私の方を見て、