轻松读懂日语经典作品
ja-reading.com
轻松读懂日语,轻松阅读日语。在线阅读日语经典作品。支持在阅读过程中显示假名、查询生词、翻译句子。
ジ アフェア オブ トゥー ウォッチイズ
The Affair of Two Watches
谷崎 潤一郎
「新思潮」1910(明治43)年10月号
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 13,107 字 · 27 页
百圓入るんじゃないか。そんな眼先の利かない事をするものかい。」
其の晩三人の口に百圓が何度繰り返されたか知れない。
十一時過ぎに開明館を出て、暗い寒い夜路を四丁目の電車停留所迄出る間に、私は遂に下駄の鼻緒をやっつけて了った。で、夜を幸い見えも外聞もなく手拭で足を台へ縛り付けて歩いた。
私は此の頃激しい Hypochondria に陥り、たった独りになると獰猛なる強迫観念に襲われて、居ても立っても堪らなくなるのだが、不思議と今夜は神経が下駄の方へ使われて、一向恐ろしがる気が出ない。オスカー・ワイルドが、ドリアン・グレイの中で、「心霊の悩める時は官能の快楽を追い、官能の悩める時は心霊の快楽を追え。」と云うような事を云って居るが、私は茲に一つの真理を発見した。曰く「強烈なる心霊の苦痛は、偶ま些細なる肉体の苦痛を以て滅却する事を得。」そうだ、………それに違いない。………
どう云う拍子でこんな事を考え始めたものか、判然しないが、私の足が暗闇で一生懸命跛足を曳いて居る間に、私の頭は頻りにこう云う真理を発見する事に努力し出して、それからそれへと纏まりのない思想の断片が脳中を組んず解れつした。