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ジ アフェア オブ トゥー ウォッチイズ
The Affair of Two Watches
谷崎 潤一郎
「新思潮」1910(明治43)年10月号
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 13,107 字 · 27 页
私は早速聞いた。
「処が三圓にしかならんのじゃ。最初杉さんの時計を出したら八十銭にしか取らんと云う。君のがあったのでやっと三圓になったんじゃ。………」と、原田は五圓にならなかった代りに、私の時計を褒めて居る。
「………それに時計と云う奴は入ったら大抵もう流れるに定って居るから、質屋の方でもあまり喜ばん。………いや何も君の時計を流すと云うじゃないがな。………一体質屋は流れよりも利子を取るのが目的なんじゃ。」
何だか大分昨夜とは口うらが変って来た。
「残額二圓誰かから借りよう。昨今我々は逼迫して居るから、早く五圓にして丸善へ持って行かないと、費っ了いそうだ。」
と杉は原田の手にある三圓へ秋波を送る。
「そうだ。三圓位グズ/\して居ると瞬く間だよ。」
「何だか費ッ了いそうだナ。」
こう云って、杉が今にも手を出しそうな顔をした。すると原田が此れにつけ入って、
「アッそう、そう。一寸此の中から筆記帳とインキを買わして呉れや。」
と、怪しからん事を云い出す。
「馬鹿を云え。一枚でも紙幣が崩れりゃ忽ち失って了うに定って居る。あと二圓足しさえすりゃ百圓になるんじゃないか。お前はそれだから可かんよ。