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ジ アフェア オブ トゥー ウォッチイズ
The Affair of Two Watches
谷崎 潤一郎
「新思潮」1910(明治43)年10月号
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 13,107 字 · 27 页
「止すなら止しても好えが、然し君等はいざとなると駄目な男じゃ。私ゃ屹度独りでもやって見せるぜエ。」
原田はこんな負惜しみを云ったが、
「―――じゃ今夜は何処へ行こう。久し振で寄席もいゝがな。鈴本! たしか小さんがかゝっとった。」
などと云う心配もした。
「いや喰おう。これだけあれば可なり肉が喰えるよ。」
こゝで三人暫くこうしよう、あゝしようと、久しく胸中に結んで解けざりし欲望満足の計畫を提供したが、結局牛鍋のジクジク云う音を聞いて、ぐびり/\やりながらお互の真紅な顔を睨み合うのが一番景気が好さそうだと云う事になって、大学裏門側の豊国へ躍り込んだのは午後四時頃であった。
「そう酒を沢山飲んじゃ足りなくなるぜ。」
と云いながら、原田は盛に鍋をつッ突いた。大きい肉の片を頭の上まで高々と摘まみ上げて、タラ/\垂れる醤油を舌で受けながら、ぱくりと口腔へ落し込む藝当は馴れたものだ。そして時々、
「うまいなあ。」
と心底から感歎の声を放つ。
追々と酔が廻って来た。三人共浅ましく元気づいて喰うやら喋るやらした。
「要するに百圓這入らなかったのは事実だけれど、時計が二つなくなったのも事実らしいね。