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ジ アフェア オブ トゥー ウォッチイズ
The Affair of Two Watches
谷崎 潤一郎
「新思潮」1910(明治43)年10月号
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 13,107 字 · 27 页
「あゝッ………」
今迄調子づいてはしゃいで居た原田が、フイと思い出して物欲しそうに嘆息したので、杉と私とはドッと吹き出して了った。
「………飲みたいなあ。お互に血の出るような冗談を云うたって仕様がない。え、杉さん。」
原田は杉と私に限って妙にさん附けにした。
「駄目だよ今日は。観念めるさ。とても抗わぬ事だから、僕は此処を先途と喋り散らして花々しく討死する覚悟だ。ワッハヽヽヽ」
杉が途方もない声で笑った。何ぼ大道のまん中でも杉の笑い声と来たら可なり騒々しい。一座の中へ杉が跳び込んでゲラゲラと一遍引っ掻き廻したが最後、皆の頭は急に脱線して愚にも付かぬ事が可笑しくなり、果ては満堂総崩れで狂人のように転がり出す。
「そろ/\事が不穏になって来たね。僕は君等と顔を合わせさえしなければ、そんなに飲みたい気も起らないんだがナ。」
此れは全く私の正直な所なのだ。
「僕だってそうサ。教場で筆記を書いてる間はケロリとして居るんだが………全体原田が悪いよ、飲もう、飲もうッて口から手が出そうな顔さえしなけりゃ、格別飲みたい筈がないんだからな。」
「けれども君イ、察して呉れやア、私ゃ此の一週間酒の匂を嗅がんのじゃ。