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ジ アフェア オブ トゥー ウォッチイズ
The Affair of Two Watches
谷崎 潤一郎
「新思潮」1910(明治43)年10月号
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 13,107 字 · 27 页
」
此の文句が如何にも哀れっぽかったので、又しても寒風に大口を開いて笑った。
一体三人共実家が貧乏で、大学生にしてはあまり幅の利く方じゃないのだが、それで月始めに二十圓でも二十五圓でも持つと、一時に豪遊(?)を極めて一と月の大半は文なしで暮らすのだ。文科の私がいつから此の法科の二人と懇意になったのか判然しないが、恐らく高等学校の二年時分の事らしい。何でも杉が私の手に握って居る五十銭銀貨を横眼で睨んで、
「君、ソイツを提供したらどうだナ、徒らに手から汗が出る程握って居ても仕様がないじゃないか。」
と云った事を記憶えて居る。杉と一緒に始めて原田の下宿を訪ねたのは初夏の午過ぎだったが、天井の低い四畳半の部屋へ入ると突然黴の臭がムッと鼻を衝いて、嫌に湿っぽいべと/\の畳が歩く度にミシミシと云った。そして主人公は汗臭い蒲団の上へ腹這いになり、ギラ/\西日の射し込む窓の障子を立ち上って閉めるのが億劫なのか、座敷の中央に洋傘をさして寝て居た。爾来三人は肝胆相照して毎日のように此処に集っては Tabaks-Collegium に夜を更かした。凡そ我々のスクール・ライフ中に生じた主な出来事は大抵三人が共通であった。