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ジ アフェア オブ トゥー ウォッチイズ
The Affair of Two Watches
谷崎 潤一郎
「新思潮」1910(明治43)年10月号
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 13,107 字 · 27 页
こうすると毎日々々一銭ずつ儲かって而も電車へ片道乗れる理窟になる。何だか変だとは思ったけれど、其の時にはどうしても、そうとしか思われなかったから不思議じゃないか。」
原田と私は一寸煙に巻かれて、何処が可笑しいのか見当が付かなかったが、何でも笑って置けば間違いがなさそうだったから、
「あはゝゝゝゝ。そいつは滑稽だ。」
と合槌を打って居た。
根津権現の裏門の手前を左へ折れて、溝に沿うて生垣の多い狭い路へ出た。此処辺は冬になると処々ジメジメした霜解の土が終日乾かず、執拗く下駄の歯に粘り着いて歩くのも相応に骨だが、それでも舌の根は休ませなかった。
「そう云えば杉さん、君は授業料を出したかな。」
こう云った原田は少し心配そうだった。多分杉も未納だろうから、そんなら己も安心だ、と云う風が見える。
「其の話は止そう。気になって仕様がない。」
と、杉は急に顔を曇らせて、不安らしい眼付をした。
こんな心配は試験同様毎学期繰り返されるのだ。此の中で珍しく授業料が済んで居るのは私だけ、二人は疾うに費い込んで了ってる。こう云う場合いつでも金策の計畫を立てるのは杉に定って居て一寸聞くと天晴れ妙案で尤もらしく、アワヤ紙幣の束が掴まれそうな際どい処迄漕ぎつけるものだから、原田や私はのぼせ上ってゾクゾク嬉しがるが、よく考えて見ると、大概は如何にも実行が