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ジ アフェア オブ トゥー ウォッチイズ
The Affair of Two Watches
谷崎 潤一郎
「新思潮」1910(明治43)年10月号
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 13,107 字 · 27 页
出来そうで到底実行の出来ない事ばかりであった。
「所で僕に一策があるんだよ。」
そろ/\杉が始め出した。
杉の計畫と云うのはこうだ。
此の頃丸善から出したヒストリアンスヒストリーの豫約廣告に依ると、最初手付として金五圓出しさえすれば、直ぐに定価百五六十圓の書物を全部送り届けてくれる。残金は月賦にして二十箇月間に返済すれば好い。所で我々三人が奔走して五圓の金を拵え、誰か一人の名義にして書物を受け取ったら其れを質屋へ持って行く。先ず安く見積っても七八十圓には取ってくれるに違いない。或は百圓位で売ると云ったら買手はいくらでもあろう。さあどうだ! 二人の授業料三十圓を差引いて少くとも四五十圓は飲めると云うものだ。そこで月賦の方は以来二十箇月間、三人平等に分担して支弁すれば、月々大した重荷ではない。
「どうだ巧いだろう。なアに、月賦さえチャンチャンと拂えば、丸善の方だって少しも損はしないのだからな。」
すると第一に雀躍して喜んだのは原田だった。
「へーえ、それア好え。」と眼を圓くして、「私ゃどうしてもやらにゃ置かんぜエ。君等が嫌なら私一人でもやる。成る程、ウム、………確か、確か、屹度うまく行く!」