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ああぎょくはいにはなうけて

ああ玉杯に花うけて

佐藤 紅緑

「少年倶楽部」1927(昭和2)年5月号~1928(昭和3)年4月号

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 126,617 字 · 250 页

青空文庫

千三は小学校にありしとき光一のくせをよく知っている、かれは光一がかならず自分の方へ打つだろうと思った。

「打たしてもいいよ」と千三は五大洲にいった。

「よしッ」

五大洲はまっすぐな球をだした。戞然と音がした、見物人はひやりとした、球ははたして千三に向かった、千三は早くも右の方へよった。

「しめたッ」

と思う間もなくかれは足をすべらした、喝采の声が起こった、球は一直線に中堅の方へ転がった。千三の目から涙がこぼれた。光一は早くも二塁に走った。

つぎの打手は敵の主将小原である。ホームランか三塁か、いずれにしても一点は取るだろうと人々は思った、投手五大洲はじっと腕をくんで捕手のサインを見やった。第一球は高目のカーブであった。五大洲はそのとおりに球を投げた。小原はボールを取るだろうと思いのほか、かれはおどり上がってそれを打った、球はショートの頭をはるかに高く飛んだ、千三はうしろに走った、と球は伸びるかと思いのほか、途中で切れてさか落としに落ちた、ハッと思う間もない、光一は疾風のごとく本塁を襲うた、千三はあわててホームに投げた、球は高くネットを打った。

次の打者の三振でわずかに食い止めたものの、第一回において黙々は一点を負けた。