轻读日语

轻松读懂日语经典作品

ja-reading.com

轻松读懂日语,轻松阅读日语。在线阅读日语经典作品。支持在阅读过程中显示假名、查询生词、翻译句子。

あとがき(『みやもとゆりこせんしゅう』だいななかん)

あとがき(『宮本百合子選集』第七巻)

宮本 百合子

「宮本百合子選集 第七巻」安芸書房、1948(昭和23)年10月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 1,204 字 · 3 页

青空文庫

暗くしめっぽい一つの穴ぐらがある。その穴ぐらの底に一つの丸い樽がころがされてあった。その樽は何年もの間、人目から遮断されたその暗がりにころがされていて、いそがしく右往左往する人々は、その穴ぐらをふさいでいる厚板の上をふんで歩いていながら、その足の下にそんな樽のあることは心づかなかった。よしんば、そこの穴ぐらや樽について知っている人があったにしろ、そのことについては黙っていた。なぜなら人々は、云っていいと許されていることについてしか話せなかったし、穴ぐらや樽については話していけないからこそふたでふさいで暗いところにころがしておくのであったから。

ところが、或る夏の日、あたり一帯もの凄い音響がして、やがて死んだようにしんとなった。しばらくして、その森閑とした大気のどこかしらから人声がきこえて来た。かすかだった人声は次第にたかまり、やがて早足に歩く跫音がおこり、やがてかたまって駈けまわるとどろきになって来た。君たちは、話すことができる! 君たちは話すことができる! そういう歓喜の叫びが穴ぐらの底までつたわって来た。樽は、幾年ぶりかで穴ぐらから外気の中に運び出された。