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あるニュー・フェイスへのてがみ
あるニュウ・フェイスへの手紙
岸田 国士
「演劇 第一巻第一号~第七号」1951(昭和26)年6月1日~12月1日、「演劇 第二巻第一号~第二号」1952(昭和27)年1月1日~2月1日
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 49,146 字 · 96 页
例の自由劇場の創立者アンドレ・アントワアヌは、幕間の廊下に起ちはだかって、誰憚らず、「これでフランスの芝居は三十年後戻りした」と、大声で喚いたという、有名な話が伝わっていますけれども、それはまあ、自然主義舞台の信奉者アントワアヌらしい放言で、もっともっと切実な疑問を多くの作家、劇評家に抱かせたことは事実のようです。
その疑問をひと口に言ってしまえば、おそらくジュウル・ルナアルのロスタン評に帰着するのではないかと思います。即ち、月並と偉大さのカクテル、天才風に調理された凡俗味、とでも言えるのでしょう。主題も構成も、ちょっと気の利いたメロドラマにすぎない。しかし、そのセリフの文体に至っては、韻文詩劇として、古今稀にみる奇想と名調子とに満ち満ちている。甘美にすぎて、悪趣味に陥らず、滑稽をねらって軽きに失しない程のよさは、フランス人を無条件に酔わせるというところがあります。
そこで、時代も、国もちがうわれわれの現在の立場で、この戯曲を、この翻訳で素直に味ってみると、「新しい芝居」の将来を問題にしたうえで、やはり、これから学ぶところはたいへんにあると思います。