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あるおんせんのゆらい

ある温泉の由来

佐々木 邦

「講談倶楽部」大日本雄辯會講談社、1936(昭和11)年12月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 14,655 字 · 30 页

青空文庫

僕は迷惑千万だと言った。家に女房の待っている中島君は本当に迷惑したと見えて、先ず姿を消した。村へ逃げて帰ったのである。僕は親父が迎えに来た。中島君の注進で、親父も捨て置けないと思ったのだろう。

「こら/\。こゝは待合だぞ。子供の泊っているところじゃない」

と親父が叱った。こういう若い企業家に皆がペコ/\頭を下げるのだから面白い。中島君のお父さんは、

「ほう。清三郎、矢っ張り猫には増しだったな」

と言って褒めたそうだ。親には敵わない。もう一つ先生ってものは苦手だと思った。中学校長の談話が新聞に出た。

「小池と早川は在学中可もなく不可もない成績だった。何でも村同志仲の悪いことを心配していた。心掛けは決して悪くない。東京遊学の志望だったが、それほどの頭でもないと思って、僕が差止めた。その為め村にゴロ/\していて今度温泉を掘り当てたのだろう。人間は何処で何に当るか分らない。頭の悪いもの、必ずしも失望するに及ばない。旧師として望むところは、この際二人が逆上しないで、与えられた力を同胞の為めに善用することである。云々」

僕達は幸いにして、校長の期待に反かなかった。