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いさましいはなし
いさましい話
山本 周五郎
「講談雑誌増刊号」博文館、1950(昭和25)年2月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 36,835 字 · 73 页
まちがっても負けるようなことはないと思った。
「口に戸は立たない、云いたいだけ云え、よかったらいくぞ」
益山が罵るように叫んで、刀を抜いた、あとの四人も刀を抜きながら左右へひらいた。八木隼人はうしろへ退り、だがもし危険なら出るつもりで、ひそかに刀の鯉口を切った。左側の松林はやや疎らで、下草のぐあいもよさそうにみえる、玄一郎は不利になったらそこへかれらをひき込もうと思った。
「右を押せ上原、右だ」
益山が叫んだ、上原十馬が右へまわろうとする、玄一郎が逆に、左の端にいる三次軍兵衛を覘って空打を入れた。
その動作で上原をたぐり込もうとしたのである。しかしその刹那左側の松林の中で銃声が起こり、玄一郎の躯ががくっと大きく傾向いた。
八木隼人があっと叫び、刀を抜いてとびだして来た。玄一郎は左足を曲げたまま、「林の中をたのむ、こっちは大丈夫だ」
こう云って頭を振った。弾丸は太腿に当った、しかし五人に向けた身構えは少しも変らず、切尖さがりの刀はかれらを身動きもさせなかった。
「――残念だが逃がした」
林の中から八木の声が聞えた。
「――しかしもう邪魔はないぞ」
益山郁之助は、じりじり詰め寄って来た。