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いなか、の、じけん

いなか、の、じけん

夢野 久作

「探偵趣味」「猟奇」1927(昭和2)年7月~1930(昭和5)年1月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 39,535 字 · 78 页

青空文庫

何でも……事務所の医者(炭坑医)は二三日前から女郎買いに失せおって、事務所を開けてケツカル……今度出会ったら向う脛をぶち折ってくれる……というので……」

「……フム……不都合だなそれは……」

「……ネエ旦那……あいつらア矢っ張り洋服を着たケダモノなんで……」

「ウムウム。それから兼はどうした」

「それから山の向うの村の医者ン所へ行ったら、此奴も朝から鰻取りに出かけて……」

「ナニ鰻取り……」

「ヘエ。そうなんで……この頃は毎日毎日鰻取りにかかり切りで、家には滅多にうせおらんそうで……よくきいてみるとその医者は、本職よりも鰻取りの方が名人なんで……」

「ブッ……馬鹿な……余計な事を喋舌るな」

「ヘエ……でも兼の野郎がそう吐かしましたので……」

「フーム。ナルホド。それからどうした」

「それから兼は、その村の荒物屋を探し出して、風邪引きの妙薬はないかちうて聞きますと……この頃風邪引きが大バヤリで売り切れてしまったが、馬の熱さましで赤玉ちうのならある。馬の熱が取れる位なら人間の熱にも利くだろうが……とその荒物屋の親仁が云うので買って来た……しかし畜生は薬がよく利くから、分量が少くてよいという事を俺はきいている。