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いなか、の、じけん

いなか、の、じけん

夢野 久作

「探偵趣味」「猟奇」1927(昭和2)年7月~1930(昭和5)年1月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 39,535 字 · 78 页

青空文庫

「これはどうもこの村の風儀上面白くない」と小学校の校長さんが抗議を申込んだために、村長さんがその届を握り潰している……とか……村の青年が近いうちに暴れ込む手筈になっている……とか……町の警察でも内々で事実を調べにかかっている……とかいう穿った噂まで立ったが、そのせいか「金持ち後家」の一家三人は、裏表の戸をピッタリと閉め切って、醤油買いにも油買いにも出なくなった。いつもだと後家さんは、収穫後の金取り立てで忙しいのであったが、今年はそんなもようがないので、借りのある連中は皆喜んだ。

ところが又そのうちに、収穫が一通り済んで、村中がお祭り気分になると、後家さんの家がいつまでも閉め込んだ切り、煙一つ立てない事にみんな気が付き初めた。初めのうちは「後家さんが、どこかへ子供を生みに行ったんだろう」なぞと暢気なことを云っていたが、あんまり様子が変なので、とうとう駐在所の旦那がやって来て、区長さんと立ち合いの上で、裏口の南京錠をコジ離して這入ってみると、中には人ッ子一人居ない。そうして家具家財はチャンとしているようであるが、その中で唯一つ金庫の蓋が開いて、現金と通い帳が無くなっているようす……その前に男文字の手紙が一通、読みさしのまま放り出してあるのを取り上げて読んでみると、あらかたこんな意味の事が書いてあった。